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2012.11.01 Thursday

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2011.05.19 Thursday

カムイとサンの物語(アイヌ、蝦夷神話 

 

『愛し崇める我が主。我らは貴女の剣となり楯となり御身を御守りいたします。』(サン)

●  ●  ●


雪が降っている。

冬。
日本は硬い氷に包まれて眠る。

カムイ達はその冷たき世界に降り立った。

そこを社にし、そこで生き抜き、そこから新たな国を生み出そうとして降り立った。

「新しき道を開く為、この冷たき土地で暮らそう」


カムイたちは土地を分かち、それぞれの新しき道へと進んだ。


●  ●  ●

何百年かが過ぎ、凍れる土地には命が溢れた。

サンという名の青年は一人のカムイが生んだ国(街)で命を授かる。

カムイは歳をとらず、シラカンバの樹木に囲まれた社の奥で過ごしていた。

新しい命が降りたという知らせに、カムイはいつものように優しい微笑みで喜びを見せた。


女神(カムイ)の腕に赤ん坊(青年)は抱かれる。

名を授けられた。


サン。


赤ん坊は、新しき世の光という名の意味を持つ名を与えられた。




サンは成長し、弓も槍も使いこなせる村随一の武具の使い手となった。

若々しく高い士気に溢れ勇猛果敢なサンの評判は、村の中で一番高かった。


サンはカムイを愛した。

あの日、カムイの威を受けた時から、サンの心の中にはカムイのために生きる事だけがあった。


●  ●  ●

『私は鹿を狩りに行き、雪の大地に足を滑らせ怪我をしてしまったのです』


冷たい雪に覆われた森林の奥で、不慮の事故により血を流し倒れたサンの元へ、

白い装束を纏ったカムイの少女が現れた。


サンは朦朧とした意識の中で彼女の優しい手から、光が溢れだすのを見ていた。

びょうびょうと吹き荒れる雪。

唸る様に揺れる樹木。


その中で、カムイの少女は、別世界にあるかのように静かだった。


「生きなさい。あなたに命を授けた神のために」


少女の唇から、大人びた神聖な言霊が降ろされる。

サンは、その声を聞いた瞬間に少女に恋をした。

暖かい光に包まれながら、サンは決意する。


この方の為に生きよう。

この方の為に命を捧げよう。


目が覚めた時、サンは生きている喜びと、荒れ狂う白い吹雪の中で見た少女の事を想って胸が熱くなるのを抑えきれなかった。


●  ●  ●


少女がこの村の「カムイ」であることを知ったのは、それから間もなくのことだった。

シラカンバの森林の奥にある社に彼女がいる事を知り、サンは村人たちの、特に村で権威を持つ者達にみつからないように、こっそりと彼女に会いに行った。


彼女に会う事は禁忌とされ、村人の誰もがシラカンバの森の奥へ近づくことを許されていなかったからだ。


踏みしめる足もとで雪が鳴る。

歩いている間、またあの少女に会えると思う気持ちの高なりを抑えきれなかった。


―――しかし、シラカンバの森の奥にある社は、みつからなかった。


サンは、それから何度もシラカンバの森の中を彷徨ったが、とうとう見つけることができずに、幾日もが過ぎた。


「会いたい」

サンの心の中にある気持ちが膨れ上がる。

想っていれば会えるのだろうか。



サンの心に彼女への想いが消えないまま、それから何年もが過ぎた。




2012.11.01 Thursday

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