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2012.11.01 Thursday

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2011.05.19 Thursday

カムイとサンの物語(アイヌ、蝦夷神話◆

 

サンは大人になった。

結婚し子が生まれ親となり、村の守り手として活躍した。

サンがカムイの少女に出会った最初の日から三十四年。

穏やかな春の日差しが降り注ぐ羊蹄山の高地で、サンは再び彼女を目にする。

羊蹄山の裾野から大地を眺めるカムイの少女は、大人になっていた。



●  ●  ●

サンとカムイは偶然、そこで再開した。

サンは薬になる草花を探して、村から離れた羊蹄山まで足を伸ばした。

そこに、あの日見た少女が、佇んでいた。

それがあの時の少女だと判ったのは、

白い装束と長い髪、額を覆う飾りが、あの日見た物と同一だったからだ。

「カムイ様…」

サンは、名を呼んだ。

震える声だった。

長年探し続けた想い人。


膝をつき、両手をつき、崇める様にサンは額を地面につけた。

泣いていた。

なぜ泪が出るのかはわからなかった。

ただ、

ただ、ただただ、喜びだった。


「ずっと貴女をお探ししていました」


もう、少女と言うには成長しすぎた、女神に等しい姿をしたカムイが、サンへ顔を向けた。

穏やかに、唇を閉じたまま笑んでいた。

緩やかに優しい風が二人の間を吹き渡る。

どれほどの時間、サンはそうして泣いていたのかわからなかった。

ふと気付くと、女神はサンをもう見てはおらず、前方にある広大な風景を見詰めていた。


「カムイ様…?」


「戦が始まります。この土地もやがては争いの火種を生みましょう。そうなった時、あなたは戦いますか?」

サンは眉を潜めた。

カムイはサンに視線を向けて、泣くとも笑うとも言えない表情を見せた。

白い装束が、風に靡いている。

大きな数珠を持った手。

勾玉の飾り。

小さな神鏡をいただく額飾り。

藍色の瞳。

「カムイ様…」

「サン。あなたは私と共に戦い、私と共に生き、私と共にこの土地を守り、そして死ぬ覚悟がありますか?」

「…もちろんです。私はあの日、貴方に命を分け与えられた。あの日から、あなたの為に生き、あなたの為に命を捧げると誓ったのです。この大地の神々に」

カムイの女神はサンを慈しみ深い目で見詰めた。


その視線は、サンの魂を包み込む程に深く、まるで柔らかい羽に包むかのように優しい。


慈悲という感覚を、この時サンは初めて知った。







2012.11.01 Thursday

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